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紫外線対策は「親子で楽しむ」
開発者の経験から生まれたサングラスとは?
山本光学株式会社は、2022年より「子どもたちの成長を見守るアイウェア製品・サービスの創成」をテーマとした「SWANSキッズ・ジュニアプロジェクト」を開始しました。プロジェクトの第一弾として、クラウドファンディングサービスのMAKUAKE(マクアケ)で販売を行った子ども用サングラスの「Solasido(ソラシド)」は、目標金額の約250%を達成し、7月からは一般販売も開始しています。
近年、子どもの紫外線対策については日本でも意識が高まってきていると言われています。ある調査によれば、10歳以下の子どもを持つ母親の大半が子どもに日焼け止めを使用しているという結果がありますが、サングラスに関しては子どもが着用している姿を見ることはまだまだ少ないのが現状です。私も子育てと仕事を両立しており、紫外線による影響を知る以上、子供が外で遊ぶ際にサングラスを着用させたい想いがありました。しかし、SWANSのラインナップはアスリートが使用するスポーツグラスがほとんどで、子供用の商品展開がなく、仕方なく他社の製品を探していました。
子ども用サングラスは、おもちゃのような可愛い見た目の物が多いです。すぐに壊すかもしれない子どもに高価なものはどうだろうと思ったので、とりあえず価格の安いものを購入してかけさせてみました。しかし、すぐに外してしまって着用するのを嫌がってしまいます。理由を聞いてみると、「遊んでいるときにズレるのが嫌だから外した」という、率直で子供らしい答えが返ってきました。さらに、可愛らしい見た目も子どもには「単なるおもちゃ」として認識されてしまうようで、遊び道具の一つとしてあっという間に壊れてしまい、捨てざるを得なくなってしまいました。
その時に感じたのは、親が「紫外線対策」だけを強制しても子供にとっては続かないということです。親子で楽しめるもので子供が快適に愛着を持って使えるものがあれば、日常におけるサングラスの着用がもっと定着するのではないかと思いました。
この気づきによって生まれたのが、子どもたちの成長を見まもるアイウェア製品とサービスの創成を目的とする、「SWANSキッズ・ジュニアプロジェクト」です。
プロジェクト第一弾として、子ども用サングラス「Solasido(ソラシド)」の開発が始まりました。
わたしはプロジェクトリーダーを務めることになり、チームには社内の子育て世代の社員が部門の垣根を越えて参加することになりました。
まずは、子どもが嫌がってしまったズレの原因究明を開始。社員の子どもを中心に、年齢・性別ごとに顔の3Dスキャンデータを収集していき、全体のサイズ感を把握していきました。データ分析を進めていくと、成長過程の子供は顔が平たく、大人との形状比較で「鼻」に違いがあることが見えてきて、大人用のサングラスと同じ鼻パーツを使うと、顔に接する面積が少なくなることがズレの原因であることが判明したのです。
そこで、Solasidoには鼻全体を覆うラバー素材の鼻パッドを採用。子どもの多様な鼻形状にもしっかりとフィットすることが可能になり、ズレが発生する原因をクリアしました。また、パーツに金属を使用しないことで、万一衝撃を受けた際の安全にも配慮。フレームとレンズはSWANSのスポーツサングラスと同じ素材を使用したことで、子どもが多少手荒に扱ったとしても破損やケガのリスクを軽減することに考慮しました。
次に取りかかったのはレンズ部分。親子で眼を見てコミュニケーションが取りたいという意見から、着用していても外から表情が分かる明るいカラーのレンズが採用されました。
製品の付属品にもこだわり、持ち歩きしやすい大きさ・素材のケースを選び、首にかけるストラップは紛失を防ぐ上、何かに引っかかった際は一定以上の力が加わると危険が無いようにパーツが外れる設計になっています。
こうして、構想から約2年の開発期間を経て子ども用サングラス「Solasido」は完成。
親子で楽しんで欲しい!という想いから、大人用サングラス「Pathway」とのセット販売をすることになったのも、チームミーティングで出たアイデアです。製品には開発チームの経験や想いが随所に反映され、自分自身を含めて、親が子どもを想う気持ちから生まれたアイデアがたくさん詰まっています。
嬉しかったのは、社内で自分の子どもにプレゼントしたいという声を多くいただいたことです。自身が開発した製品に興味を持っていただけたことや、想いが伝わったことを実感することができました。
また、チーム発足時には普段の業務で関りが薄い方もいらっしゃいましたが、「子育て」という共通の環境は、社内で新たなコミュニケーションを生むこともできました。
きっかけは製品開発でしたが、育休や在宅勤務など、福利厚生の利用や活用についても意見交換できる機会もたくさんあり、子どものための開発プロジェクトを通じて、会社全体の子育て支援に対する意識も高まったと思います。
当社には「子どもが屋外の部活動で眼を真っ赤にしている。なんとかしたい。」といった親御さんからの相談が多く寄せられており、その想いを実現することが「SWANSジュニア・キッズプロジェクト」の意義です。
アイウェアを親子で楽しみ、親しむ環境をつくることができれば、様々な現場で意識は変わるはずです。メーカーとして最適な製品を開発することはもちろん、サービスや啓蒙と合わせて、環境をお客様と一緒に作っていくことが求められています。私自身、これからも社是である「Comfortable Safety(快適な安全)」の実現を目標に邁進していきたいと思っています。